2023年度の1年生を対象に、「本の帯を作ろう~芥川龍之介『羅生門』~」という現代の国語の授業を実施しました。

 言語文化で扱った『羅生門』を題材に、「書く領域」の単元として、作品の魅力を表現する学習に取り組みました。

 実際の本の帯を参考にしながら1人1人が本の帯を作り、グループで評価しあった後、改めて作成した本の帯をクラスで共有したうえで、各クラスの「本の帯大賞」を投票によって決定しました。投票は生徒だけではなく、クラス担任や国語科の教員、授業を管轄する部門の教務主任や1,2,3年次の主任、教頭先生や校長先生と、多くの教員にも投票してもらいました。

 単元後には、受賞した生徒たちに本の帯を添えた文庫本を贈呈しました。

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  受賞した生徒の感想です。

私は『人生は地獄よりも地獄的である』という芥川龍之介自身の言葉を引用したんですが、他の人は自分で考えた言葉を本の帯にしていました。作者の言葉を引用した私が受賞していいのかな…とも思いましたが、本の帯を作るために色々調べている中で見つけたこの言葉は作品にピッタリだと思うので、良い本の帯ができたなと少しだけ自信もありました。

◆本の帯を作ること自体、とても勉強になりました。自分が考えたことを評価してもらえたり、たくさん良い帯がある中で自分の帯を選んでもらえたのが嬉しかったです。
◆最初は全然違う言葉で本の帯を作りましたが、他の人と意見交換する中で「道徳」という言葉を入れて帯を作ろうと思い、最初とはガラっと違う帯ができました。また、夏休み中のレポート活動が今回の授業に役立ちました。レポートを書く中で、「道徳って何なんだろう」と思ったので、その時の自分の疑問を読者に投げかける形で帯を作ってみました。周りの人にアイデアをもらいながら試行錯誤して作った帯が受賞して嬉しかったです。
◆クラスの人たちの本の帯を見ると良いものばかりだったので、自分が選ばれるとは思っていなくてビックリしました。担任の先生も選んでくれていて、光栄です。
◆普段本を買ったり読んだり全くしないんですが、選んでもらって嬉しかったです。「ある男の勇気が走り出す」と擬人法を用いたことで、「実際の下人の行動」と「その時の下人の気持ち」が交差する感じを表現しようと思って帯を作りました。
◆授業で本の帯を交流する時にも、周りから「いいね」って直接言ってもらっていたけど、実際に選ばれるとさらに嬉しかったです。言語文化で習った内容を踏まえて帯を作ることができ、出版や編集のような仕事に携われた気持ちになって面白かったです。

 

 また、単元後の振り返りでは、

◆本を買うと必ずと言っていいほどついてくる帯だが、実際に作るのには本の内容を理解しきった後、自身の考えや感想も交えなければいけない大変なものだと分かった。今回は羅生門の本の帯だったが他の帯を作ってみるのも面白いと思った。

本の帯は、読者に読みかけたり、客観的に見てどんな本なのかまとめることが大切だと気づきました。問いかけるような形にはしましたが、自分が本屋に行ったときにこの帯がついている本を取るか考えてみると、もっと工夫すべき点があるなと感じました。「生きるためには」を「生と死の境目」に変えるなど、同じような意味でも言い回しを少し変えることで格段にクオリティーが上がるなと思いました。
言語文化で初めて羅生門を読み、現代の国語で本の帯を考えほかの人が作った帯を見ることでより深く羅生門について考えることができた。
羅生門は難しい文章ではあったけど、起承転結、主人公の心情の変化が大きく、とても面白い作品だった。この本の帯を作る授業では、まず文章のキーワードを取り入れて考えた。最初は『生きるための悪は許されるか』だったけど、他の人と交流し工夫を重ねて『正義と悪。あなたはどちらを肯定する?』と、問いかけを明確に。伝えたいことを単語に区切るという工夫ができた。
作者が長い時間をかけて作り上げた作品を一文にまとめる難しさや、どのような言葉選びが大事かを知ることができました。そして、いくつか思いついた帯の中からグループで交流した際に、これとこれを合わせたらいいのではないかというアドバイスを受け、最終的な帯が決まりました。自分の中で滞っていたものが他者からの意見を得ることによって広がっていく感覚を覚えました。言葉を選ぶ、文を作るという難しさを感じたのと同時に、人と交流することの大切さも得ることが出来た良い経験になったと思います。
文が長くならないように気を付けた。一文で表すことができて良かった。難しい授業だったが、楽しかった。何かに悩むとき、人は皆羅生門の下にいるのだと思う。そして心の声である老婆に耳を傾け、決断をして門を出るのだ。良い決断と共に門から出られるような人でありたい。
最初は芥川龍之介が何を言いたいのか、なぜ長年教科書教材なのか分からなかったが、描写1つ1つ、面皰などの言葉1つ1つに深い意味が込められていた。生きるために悪を正当化する又は死ぬという究極の2択を迫られた時の下人の心の変化は、色々な人に通じると思った。
初め羅生門を読んだ時は意味がよくわからない物語だったから、その状態で帯を作っていたら、今とは全然違う帯になっていただろうなと思った。夏休み課題のレポートや帯をつくる時にクラスの人との交流でそれぞれの独自の感想も一緒に聞けたから、その情報も参考にしながらいくつかの帯を作ることができた。
本の帯は手にとってもらえるようにしなければいけないのに、伝えすぎるとおもしろくない。本の帯を作るにあたって、本文を何回も繰り返して読み、入れた方がいいもの、入れなくていいものを考えるのが、1番大変だった。他の本と違うように見せるための言葉選びや、全世代が分かる言葉選びが難しかった。

 と、学習の深まりを見て取ることができました。

 

  授業資料は以下のPDFをご覧ください。

市立札幌藻岩高等学校 對馬光揮

本の帯を作ろう~芥川龍之介『羅生門』~ [398KB pdfファイル]