2024年度の2年生(2,4,5組)を対象に、「論語×ウェルビーイング」をテーマとした古典探究の授業を実施しました。
 
単元名
「論語とウェルビーイング」というタイトルでエッセイを書く。
 
伸ばしたい力
a.先人のものの見方・感じ方・考え方に親しむ力
b.自分のものの見方・感じ方・考え方を豊かにする力
c.古典作品の内容や解釈を自分の知見と結び付け、考えを深める力
d.古典作品をきっかけとして、人間や社会などに対する自分の考えを深める力
 
単元の流れ
STEP1.ウェルビーイングとは何かを知る。
STEP2.『論語』の成り立ちとエッセイの書き方を理解する。
STEP3.資料から2~3つのテーマを選択したうえで、「論語とウェルビーイング」というタイトルでエッセイを書く。
 
STEP1,2(1時間)
 初めに、「ウェルビーイング」とは何かを解説しました。
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 次に、「触覚でつなぐウェルビーイング 渡邊淳司 研究サイト」を参考にして、「自分のウェルビーイングに大切な価値観」を各自で3つ選びました。
 
 その後、グループを組み、「他の人はどの価値観を選んだのか」を当て合うワークを行いました。見事的中する人もいれば、意外な価値観を選んだと思われる人もいて、各々の価値観に驚きと共感の声が上がっていました。

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 ウェルビーイングを体感的に学んだ後、デジタル便覧を用いて『論語』の概要と、エッセイの書き方に触れていきました。なお、ウェルビーイングについてもう少し学習したい人向けに、動画「『人類3.1』これからの定常化社会におけるウェルビーイングな生き方とは!?」「Well-Being~幸福の4因子~ | 前野 隆司 | TEDxShintomi」を紹介しました。 

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STEP3(5時間)
 その後、エッセイの作成に着手していきました。
 まずは、『全文完全対照版 論語コンプリート』(野中根太郎 著)を参考にした資料を配付しました。この資料には、『論語』の各パートが分かりやすく表現されたタイトルと、本文を閲覧することができるサイトのリンクが記載されています。
 それを参考にして、自分のウェルビーイングに関わりそうな『論語』の文章を各自でピックアップし、「論語とウェルビーイング」というタイトルでエッセイを書いていきました。中には「論語の498個のパート、全て読みました!」という生徒もいて、驚かされました。
 
①気づくということ ②おじいちゃん ③探究と挑戦 ④家族
⑤兄 ⑥好きじゃない自分 ⑦野球 ⑧自分の苦手と進路 
⑨小学校の音楽係 ⑩自分らしさ ⑪推し活
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振り返り
 「仮説(伸ばしたい力)」と照らし合わせ、単元全体の振り返りを行いました。(回答数:104名)
〔仮説〕
 
 1と2を回答した生徒の多さが印象的ですが、3と4をつけた生徒の記述を見てみると、以下の内容が述べられていました。
 
a.先人のものの見方・感じ方・考え方に親しむ力
・孔子の考え方が現代に生きていることがよくわかりました。しかし、自分でもやり方がわからなく論語とこじつけている気がして、いつもと同じように文を頭の中で構成してから書き出すことがどうしてもできなかったので育成することができていないと感じました。
・自分的に結構当たり前のことが書かれてて別に新たに育成されたかと言えばそうでは無いかなって思ったから。
b.自分のものの見方・感じ方・考え方を豊かにする力
・見方、感じ方に以前とあまり変化がなかったため。
・自分の出来事を論語と照らし合わせることが難しかったから。
c.古典作品の内容や解釈を自分の知見と結び付け、考えを深める力
・あまり納得いくものは出来なかった。もう少し時間をかけて、自分を見つめ直せば、より解釈を自分の知見と深く結びつけることができたとおもう。
・論語の教えを自分のいいように解釈してしまったところがあり、本来学ぶべき教えがないがしろになってしまったから。
d.古典作品をきっかけとして、人間や社会などに対する自分の考えを深める力
・エッセイで自分のことに基づいて書いたため、人間や社会に対してまでは深めることができなかったと思うから。
・エッセイの内容が自分の主観ばかりになってしまい、人間や社会といった自分以外のものに目を向けられていなかったため。
 
 今回の単元では育成されなかったと回答しているものの、自らの課題に気付き、改善を図ろうとする意欲が見て取れる点において、注目すべき記述だと言えます。
  最後に、各生徒による単元全体の感想をchatGPTでまとめたところ、次の結果が出ました。
 
1.エッセイ執筆への挑戦と成長
・多くの生徒がエッセイを書くのは初めてで、「自由に書く」という形式に難しさを感じつつも、新しい表現方法に挑戦できたことを楽しんでいました。
・自分の考えや経験を整理し、他者に伝える過程で、自身の考えを深めることができたという声が多数ありました。
2.論語と現代の結びつき
・論語の内容について深く学び、論語の普遍的なメッセージが、自身のウェルビーイングや現代社会にも通じることに驚き、感動したという意見が目立ちました。
・古代の思想を自分の生活やウェルビーイングと結びつける中で、新しい視点や価値観が得られました。
3.ウェルビーイングの探求
・「ウェルビーイング」という概念に初めて触れた生徒が多く、自分の生活や価値観を振り返りながら考えを深める良い機会になったと感じていました。
・ウェルビーイングを社会や他者との関わりの中で捉え直すことで、より広い視点で物事を考える力が養われたという声もありました。
4.課題と改善への意欲
・多くの生徒が、自分のエッセイが説明的になりすぎた、表現力が足りなかったなどの課題を挙げ、次回はより良いものを書きたいと前向きに捉えていました。
・他者のエッセイに触れることで、自分にはない視点や表現方法に気づき、学びの幅が広がったと述べる生徒も多かったです。
 
 今回のエッセイ執筆を通して、多くの生徒が普段触れる機会の少ない「論語」や「ウェルビーイング」というテーマに新鮮さを感じながら取り組みました。初めてエッセイを書く難しさや自由度の高さに戸惑いながらも、自分自身の体験や考えを整理し、先人の思想と結びつけることで新しい発見や視点を得たと感じています論語を読み解き、自分の価値観や行動を振り返ることで、今後の生き方や考え方に活かせる学びがあったという意見が多く見られました。さらに、自分のウェルビーイングについて深く考えたり、他者のエッセイを読むことで異なる視点に触れたりすることで、多角的な考え方や表現力が養われたといいます。
 一方で、エッセイが説明的になってしまったり、論語との結びつきを十分に表現できなかったりした点への反省も多く挙げられ今後の学習ではより独自性やまとまりを意識したいという声もありました。また、論語に対する親しみや理解が深まり、今後さらに他の古典作品や思想にも触れてみたいという意欲も芽生えています。全体を通じて、生徒たちは自分の考えを見つめ直し、広い視点で物事を考えるきっかけを得るとともに、エッセイという新しい表現形式に挑戦する有意義な経験を積むことができました
 
市立札幌藻岩高等学校国語科 對馬光揮