2024年度の2年生(1,3,6組)を対象に、「見学旅行に関連した文章を読み、本文を構造化したうえで、関連する事柄を紹介する」という論理国語の授業を実施しました。
 
単元名
 評論文を構造化して解説するとともに、関連する事柄を調べながら読解を深める。
 
伸ばしたい力
a.文章の構成や展開の仕方について理解を深める力
b.内容・構成・論理の展開などを的確に捉え、要旨を把握する力
c.関連する文章や資料をもとに、内容の解釈を深める力
d.関連する文章や資料をもとに、必要な情報を関係づけて自分の考えを広げる力
 
単元の流れ
STEP1.4人前後のチームを作る。教科書に掲載されている評論文「日本人の美意識」(高階秀爾 著)を読み、チームで1枚の解説プリントを作成する。
STEP2.本文の内容に関連する歴史的建造物や美術作品について調べ、本文との関係性を指摘しながら紹介文とスライドを作成する。
STEP3.クラス全体に向けて発表する。
STEP4.読解問題に取り組む。
 
STEP1,2(6時間)
 見学旅行と関連した授業だったので、ほとんどの生徒が見学旅行の班をベースにしたチームを作っていきました。
 教員による本文の解説は行わずに、本単元の目標と流れのみ伝え、どのように時間を配分し、どのように分担するかなどは生徒に全て委ねました。
 見学旅行関連のLHRは設けていますが、あまり時間を取れていないのが現状なので、自主研修の計画も可として授業を実施しました。ゆとりのある授業となりましたが、「国語のスキル=目標はクリアすること」を繰り返し確認したうえで、活動のほとんどを生徒に委ねました。

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STEP3,4(2時間)
 調べた内容を、クラス全体に向けて発表しました。
 
〔作成したスライド〕

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 発表後には、教員から「侘しいとは何か?」「足利義政の美意識とは?」「東山文化と本文の関係性は?」「禅とは?」「茶室とわびさびの繋がりとはどのようなものか?」といった質問をチームに投げかけました。あくまでも国語の授業なので、本文との関連性において重要度の高い内容を問い、生徒は一度持ち帰って次の授業の冒頭でそれぞれ回答してもらいました。
 
 その後、Googleフォームで読解問題に取り組みましたが、多くの生徒が正答に辿り着いていました。解説プリントの作成によって本文の内容を的確に捉えるとともに、関連する事柄の紹介文とスライドの作成によって読解の深まりと視野の広がりを生徒たちは実感したようでした。
 授業の最後には、教員からのメッセージとして、「知識があると、文章を批判的に(共感したり、疑問を持ちながら)読むことができること」「文章を読んで終わりではなく、読むことを通して物事について関心を持ち、調べ、話し合い、考えること」の意義を確認しました。
 
 振り返り
 「仮説(伸ばしたい力)」と照らし合わせ、単元全体の振り返りを行いました。(回答数:102名)
〔仮説〕
 
 
 1と2を回答した生徒の多さが印象的ですが、3と4をつけた生徒の記述を見てみると、以下の内容が述べられていました。
 
a.文章の構成や展開の仕方について理解を深める力
・ただ調べた内容を示しただけであまり文章の構成にまでやりきれなかったと思うから。
・何をどの順番で書くか等を提案しただけで出力は他の班員に任せていたため。
b.内容・構成・論理の展開などを的確に捉え、要旨を把握する力
・考えてる時には順序だてて作っていったけど説明する時に段々とごちゃごちゃになって言ってしまったから。
・先生からのアドバイスを勘違いしてしまうくらい内容や論理の展開などを的確に捉えて課題に取り組む力がまだまだ足りなかったなと思う点。
c.関連する文章や資料をもとに、内容の解釈を深める力
・間違った視点から結びつけて捉えてしまっていたから。
・関連する文章や資料を集めるのが足りなかった点。
d.関連する文章や資料をもとに、必要な情報を関係づけて自分の考えを広げる力
・まとめプリントの際は他メンバーの2人に大部分を任せてしまう形になってしまった為、2人の挙げてくれた関連した点を私が本文と比較しあまりにおかしい関連付けとなっていないか確認したのみなので、自分の力でどこがどのように関連しているのか見つけ出す力はあまり身につかなかったのかもしれないと思う。
・本文と歴史的建造物の関連付けをすることはできたがそこから自分の考えを広げることはできなかった。
 
 今回の単元では育成されなかったと回答しているものの、自らの課題に気付き、改善を図ろうとする意欲が見て取れる点において、注目すべき記述だと言えます。
 最後に、各生徒による単元全体の感想をchatGPTでまとめたところ、次の結果が出ました。
 
1.学びの深化と探究的学習
 生徒たちは教科書の枠を超え、探究的に学ぶことができ、日本の歴史的建造物や美意識について新しい視点からの理解を深めたことに満足しています。また、日本人の美意識の奥深さや西洋との比較を通じて、今まで曖昧だった考えを明確にし、自身の価値観を広げたと感じています。
2.修学旅行への期待と準備
 授業が修学旅行の準備にも役立ち、現地で実際に見学することでより理解が深まることを楽しみにしている生徒が多いです。また、歴史的背景や美意識を事前に学んだことで、単なる観光ではなく、意義ある体験ができると感じています。
3.グループワークの効果
 グループでの意見交換や発表を通じて、個人では気づけない視点に触れることができ、理解が一層深まったと感じています。また、他の班の発表や意見に触れ、理解が広がり、刺激を受けたといった意見も多く見られました。
4.自信と成長
 難易度が高いと感じた内容にも関わらず、読み解く力や考えを言語化する力がついたと実感しています。また、自分なりの考えを持って歴史や美意識を探求できるようになったことから、自信が生まれ、学びへの興味も増したという声もあります。
5.教科書と現実の結びつき
 教科書の内容を実際の歴史的建造物に関連付けて考えることで、内容理解が深まったと感じています。
 
 今回の授業を通じて、教科書の内容に関連する日本の歴史的建造物や美意識について探求する機会を得たことで、学びがより深まったと多くの生徒が感じたようです。特に、京都の歴史的な建物を「わび・さび」や「否定の美」といった日本独自の美意識の視点から考察することで、教科書の内容と実際の建造物のつながりに気づき、その奥深さに驚いたという声が多くありました。
 また、修学旅行前に京都に関する事前学習を行ったことで、建造物や文化に対する理解が深まり、現地を訪れた際により多くの発見や感動を得られると期待を膨らませていますグループ活動を通じて他のメンバーの視点や意見に触れ、文章の内容を深めたり、分担してまとめ上げたりすることで個々の理解が深まりました。さらに、班ごとの発表や他班のスライドや板書からも多くの学びを得て、興味を広げることができたと感じています
 一方で、難しい単元であったため、理解に時間を要する場面もありましたが、協力しながら取り組むことで内容を完全に把握できた達成感があったと多くの生徒が振り返っています文章の内容を現実の建造物に関連づける新鮮な学びの形は、今後もさまざまな事象に好奇心をもって向き合いたいという意欲を引き出す結果となりました
 
 見学旅行が「遊び」ではなく「学び」となるようにしてほしいこと、それとともにこうした学習によって国語のスキルを身に付けてほしいことを伝えると、多くの生徒がその思いを受け取ってくれていたようでした。
 
市立札幌藻岩高等学校国語科 對馬光揮