2025年度の3年生を対象に、百人一首を題材にした古典探究の授業を実施しました。
 
ここまでの歩み
 
単元の流れ
STEP1.『小倉百人一首』の中から「お気に入りの一首」を選び、その魅力を紹介するスライドを作成する。
STEP2.グループ内で発表する。
STEP3.Google Classroomで他の人のスライドを閲覧する。
STEP4.「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」(小野小町)を英訳する。
STEP5.「お気に入りの一首」を英訳する。
STEP6.百人一首を題材にした入試類似問題に取り組む。
STEP7.短歌を作る。(東洋大学「現代学生百人一首」に応募)
 
STEP6(1時間)
 事前に本文のみを配布したうえで、百人一首の解釈の揺れをテーマにした定期考査に取り組みました。
 

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STEP7(2時間)
 最終ステップとして、日常生活を思い返し、短歌を作る創作活動に取り組みました。
 現代の学生ならではのものの見方・感じ方が溢れており、クスっと笑えるものから、感慨深いものまで、多種多様な短歌が出揃いました。
 なお、今回作成した短歌は現代学生百人一首(東洋大学)に応募します。(昨年度の優秀作品
 
振り返り
 「仮説(伸ばしたい力)」と照らし合わせ、単元全体の振り返りを行いました。(回答数:106名)
 
 
 1と2を回答した生徒の多さが印象的ですが、「c.古典を読むことを通して、日本文化の特質を理解する力」で3をつけた生徒の記述を見てみると、「和歌の世界に着目して視野が狭くなってしまったので、日本の文化という大きな視点から特色を捉えることはできなかった。その頃の人々の暮らしなどの様々な文化に着目できたら和歌をもっと楽しむことができると思った。」「日本語文化の特質ではなく、今回の単元は和歌や古文の修辞や、和歌に込められた意味を詳しく読み解くことに私は重点を置いていたので、あまり育成されたとは感じなかった。しかし、和歌の特質は、和歌について詳しく読み解く時間がほとんどだったので、今回の単元で大きく育成されたと感じた。」と述べており、今回の単元では育成されなかったと回答しているものの、自らの課題に気付き、改善を図ろうとする意欲が見て取れる点において、注目すべき記述だと言えます。
 
  最後に、各生徒による単元全体の感想をchatGPTでまとめたところ、次の結果が出ました。
 
1. 和歌を深く読み解く体験
・和歌をじっくり読み、自分なりに解釈することで、作者の心情や背景に深く迫ることができた。
・読めば読むほど新たな発見があり、古典の魅力や日本人の感性に改めて気づいた。
・古文の表現や語彙に触れることで、言葉の奥行きや時代背景に興味を持つようになった。
2. 英訳による学びの深化
・英訳に取り組むことで、和歌の意味や表現をより丁寧に考察する必要があり、理解が深まった。
・英語で表現する際にリズムや韻、語感の違いに苦労しつつも、日本語と英語の言語的・文化的違いに気づけた。
・英訳には個性が表れ、人それぞれの感性や表現の幅の違いを共有する楽しさがあった。
3. 教科横断的な学びと相乗効果
・国語と英語を横断する学びにより、それぞれの教科の面白さや必要性を再認識できた。
・古典の読解力と英語表現力の双方を高める機会となり、「知る考える表現する」プロセスが自然と深まった。
・英語で訳すことによって、日本語の豊かさや和歌の美しさも再発見することができた。
4. 活動を通じた気づきと感情の変化
・はじめは難しそうだと感じていたが、取り組むうちに楽しくなり、積極的に学ぶ姿勢が育った。
・表現や翻訳の中で自分の感性や思考の癖、語彙の限界などに気づき、成長への意欲が高まった。
・和歌を通して「自分なりに考えることの面白さ」や「他者と共有することの学び」に価値を見出した。
5. 授業デザインへの感謝
・和歌を英訳するという他にはない試みが新鮮で、表現の自由度が高く、生徒の好奇心や創造性を刺激した。
・他人の英訳と比較することで、多様な視点に触れ、学びの深さと広がりを実感できた。
・授業の全体設計(お気に入りの和歌を選ぶ・発表し合う・ワークショップを行うなど)に対して「楽しかった」「もっとやりたい」といった前向きな感想が多数。
総括
 生徒たちは、百人一首の英訳という活動を通して、古典の深い理解に加えて、英語力・表現力・他者理解・探究心といった多面的な力を育んだことを実感しており、「知的に楽しい」「自分の思考や感性が活かされる授業だった」と高く評価しています。特に「英語で表現することで日本文化をより深く知れた」という意見が多く見られ、教科横断型の意義が明確に伝わる振り返りとなっています
 
 
市立札幌藻岩高等学校国語科 對馬光揮