⑮多様性とは(国語科51期2年次)
2024年度の2年生(1,3,6組)を対象に、「多様性」をテーマとした論理国語の授業を実施しました。
単元名
テーマに関連する文章を読み、知識を増やしたうえで、多角的な視点から物事を見つめて小論文を書く。
伸ばしたい力
a.文章の効果的な組み立て方・接続の仕方を理解する力
b.根拠を明示して主張を展開させる力
c.根拠を吟味するなど、多角的な視点から自分の考えを見直す力
d.文章に論理性を持たせ、自分の主張が的確に伝わるように工夫する力
b.根拠を明示して主張を展開させる力
c.根拠を吟味するなど、多角的な視点から自分の考えを見直す力
d.文章に論理性を持たせ、自分の主張が的確に伝わるように工夫する力
単元の流れ
STEP1.チーム内で担当箇所を決め、「多様性」に関する文章を解説するスライドを作成する。
STEP2.スライドをもとに、担当箇所の内容を解説するスピーチ動画(1分以内)を各自で撮影する。
STEP3.チームで動画を1つにまとめる。(20分以内)
STEP2.スライドをもとに、担当箇所の内容を解説するスピーチ動画(1分以内)を各自で撮影する。
STEP3.チームで動画を1つにまとめる。(20分以内)
STEP4.クラス全体で各チームの動画を視聴する。
STEP5.「多様性」をテーマにした小論文を書く。
STEP1,2(6時間)
初めに、「多様性」に関するイメージを生徒に尋ねると、多くの生徒が「人それぞれ」「皆ちがって皆いい」と捉えていたので、「多様性を『人それぞれ』と表面的に捉えた場合、多様性を推進していくと、『他人とは分かり合えなくてもいい』という分断社会に発展してしまうのでは?」と投げかけました。
そこで、「多様性」という言葉を捉え直すために以下の記事を紹介しました。
まずは、1クラスをAチームとBチームに分け、自分が担当する記事をチーム内で決めてもらいました。その後、自分が担当した記事の要約スライドを作成し、その解説動画を作成していきました。なお、1人あたり1500字程度の文章を担当し、解説動画は1分以内に収めることを条件としました。
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STEP3,4(2時間)
各チームにiPadを渡し、個人で撮影した動画をチームで1本にまとめ、リレー形式で6つの記事を解説した動画が完成しました。ある生徒は「単独で動画を作るのではなく、1人1人が文章を噛み砕いて1つの動画にまとめていったので、全体の話が分かりやすくなっていました」と感想を述べていました。
チームを2つに分けたことで2種類の解説動画が出来上がったので、クラス全体で視聴したところ、同じ記事を解説しているにも関わらず人によって着眼点が異なっており、ある生徒は「解説動画が2種類あることで内容の理解度がより高まった」と感想を述べていました。

STEP5(3時間)
「多様性」という言葉が立体的に見えてきたところで、この単元のメインの活動である小論文の作成に取り組んでいきました。
まずは、小論文の基本を学びました。
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今回取り組む小論文は、静岡大学の2022年度入試をもとにした問題です。課題文では、『朝日新聞』(2021年7月13日朝刊)に掲載された鷲田清一氏のコラムが引用されており、詩人の上田假奈代氏の「多様性って、やっぱり覚悟いりますよ」「多様性は『自分にとって居心地のいい人だけと一緒にいること』とは違う」という言葉が取り上げられていました。
このコラムの趣旨を踏まえて、「多様性」について自分の考えを1200字以内で述べる小論文に取り組みました。なお、「本文の趣旨を踏まえて記述すること」「あなたの考える『多様性』とはどのようなものか提示すること」「それを実現するために社会(国、地域、学校など)はどうあるべきか提示すること」「あなた自身はどう取り組んでいくべきか提示すること」の4点を条件としました。
振り返り
「仮説(伸ばしたい力)」と照らし合わせ、単元全体の振り返りを行いました。(回答数:111名)

1と2を回答した生徒の多さが印象的ですが、3と4をつけた生徒の記述を見てみると、以下の内容が述べられていました。
a.文章の効果的な組み立て方・接続の仕方を理解する力
・同じような単語が重複していたので読みづらくなってしまった。語彙力を身に着けようと思った。
・データと他の人の意見と自分の主張など、盛り込むものが多かったため、組み立て方が難しく、効果的な組み方とは言えないものになってしまったから。
b.根拠を明示して主張を展開させる力
・小論文では、自分の考えや意見が多くなってしまい、実際の調査やアンケートなどでの割合や結果などを組み込むことができず、根拠に欠ける文章になってしまったから。
・具体例と考察は書くことができたが、取り上げた具体例が自分限定の実体験だったため、万人が理解できる根拠ではないと思うから。
c.根拠を吟味するなど、多角的な視点から自分の考えを見直す力
・いろんな視点で物事を考えられたけど根拠に対しての吟味が足りなかったと感じた。もう少し吟味を重視していたら根拠がもっと良いものになっていたのかなと思いました。
・根拠をいくつか出して書くことができたが、考えが自分の視野で留まりがちになってしまっていて、多角的に考えられていないと感じた。
d.文章に論理性を持たせ、自分の主張が的確に伝わるように工夫する力
d.文章に論理性を持たせ、自分の主張が的確に伝わるように工夫する力
・いつものレポートとは違って文量が制限されていたので、主張に具体性を持たせたり、説得力のある文をつくるのが難しかった。使う言葉や言い回しを工夫することが大切だと感じた。
・「社会はどうあるべきか」「自分はどうするべきか」について書くのが難しかったです。最初に主張したことと矛盾点がないかとかをもっと考えた方がよかったです
今回の単元では育成されなかったと回答しているものの、自らの課題に気付き、改善を図ろうとする意欲が見て取れる点において、注目すべき記述だと言えます。
最後に、各生徒による単元全体の感想をchatGPTでまとめたところ、次の結果が出ました。
1.多様性への理解の深化
・多様性というテーマについて深く考える機会となり、自分自身の考えを見直したり新たな視点を得たりすることができた。
・「多様性」の言葉の曖昧さや、捉え方の難しさを感じつつも、具体例を通じて理解が深まった。
・自分が普段考えていた多様性の解釈に加え、新しい観点から再考するきっかけとなった。
・生物学的な多様性の捉え方だけでなく、人間社会における多様性についても理解を深められた。
2.協働・発表活動の経験
・動画作成やクラス全体での発表を通じて、他者の視点や表現方法を学ぶことができた。
・分担して文章を解釈・要約する活動が、自分の理解を深める助けとなった。
・他のグループの発表内容から新たな気づきを得られ、新鮮な学びの体験となった。
3.小論文の書き方・学び
・小論文執筆に挑戦し、文章構成や具体例の重要性を学んだ。
・自分の意見を整理し、筋道立てて書く力を養うことができた。
・初めは難しさを感じたが、構成や練り方を工夫することで苦手意識を軽減できた。
・限られた時間で書く訓練を通じて、情報整理や文章の質の向上が実感できた。
4.課題や反省点
・内容が難しく、主張や文章の裏付けを考えることに苦戦した。
・書き足りない部分や構成の甘さを感じることが多く、今後の課題として語彙力や文章力の向上を意識したい。
・時間内で効率的に情報をまとめ、説得力のある文章を書くことの難しさを実感した。
5.授業の良さと今後への活用
・動画撮影やスライド作成といった新しい取り組みが興味深く、学びが深まった。
・他の生徒の発表から刺激を受け、自己成長につながった。
・多様性というテーマに触れることで、日常生活や将来の学びにつながる知識を得ることができた。
・「多様性」というキーワードを深く理解することで、入試や将来の課題に役立つと感じた。
今回の学習を通じて、生徒たちは多様性について深く考える機会を得ました。「多様性」というテーマは曖昧さや捉え方の難しさを伴うものでしたが、具体例や他者の視点を通じて新たな理解を得ることができました。生徒たちは、自分が持つ既存の考え方を見直し、多様性を多角的に捉えるきっかけを得たと感じています。
また、協働活動や発表を通じて、他者の視点や表現方法を学び、自分の考えをより深める機会となりました。他のグループの発表から得た新たな気づきや発見は、クラス全体として学びを共有する重要性を再認識するものとなりました。
さらに、小論文の執筆では、自分の意見を整理し、論理的に文章を構成する力を養うことができました。特に、限られた時間内で効果的に情報を整理し、説得力のある文章を書く難しさを実感しつつも、文章力や語彙力の向上を意識することで、今後の課題を明確にすることができたとしています。
一方で、内容が難しかったことや文章の構成に苦戦したことを課題として挙げる声もありました。それでも、生徒たちは今回の学びを通じて、多様性についての理解を深めるとともに、論述力や協働スキルの向上を実感しており、これらの経験を日常生活や今後の学習、さらには入試や将来の課題解決に役立てたいと考えています。
市立札幌藻岩高等学校国語科 對馬光揮

登録日: 2025年1月27日 /
更新日: 2025年1月27日