敗者復活 

 今年度は学校の外での会議が多く、 学校を空けることがしばしばです。5月の第3週は、月曜日は当番校業務として野幌総合運動公園で高体連札幌支部テニス選手権大会があり、火曜日から木曜日までさいたま市で開催された全国高等学校長会と全国都市立高等学校長会に出席し、戻ってきた金曜日は月曜日から開催されていたテニス選手権大会の閉会式に臨みました。テニスの当番校業務はテニス部の顧問の先生方だけではなく、部員である生徒も業務を行い、無事に終了することができました。当番校業務を担った本校の先生方、生徒の皆さんに感謝するとともに、高体連札幌支部の皆様はもちろん、札幌テニス協会の皆様をはじめ、各学校のテニス部顧問の皆様、関係する全ての皆様に御礼を申し上げます。

高体連の支部大会が終わり、勝ち進んだ選手の皆さんは、是非全道大会での活躍を期待したいところです。何といっても、今年度の高校総体は36年ぶりにここ地元北海道で開催されますので、ぜひインターハイへの出場の切符をつかんでほしいと思います。

さて、全道大会へ進むことができなかった高校3年生(本校では6年生)は高校段階での部活動が終了しました。汗にまみれ、時には悔し涙を流したこともあったかもしれませんが、部活動に青春をかけ、やり尽くしたという気持ちをもったのなら、それはよい終わり方ではないかと思います。もちろん、大学などの次のステージでも引き続き部活動を行う生徒の皆さんもいるかと思います。さらに充実した活動になることを祈っています。

北海道新聞の夕刊に「魚眼図」というコラムがあります。いつ掲載されたのか忘れてしまいましたが、この「魚眼図」に北海道大学の竹内康浩教授が書いた「勝利は過大評価されている」という文章が載っていました。「勝利はとてもわかりやすい価値だ。賞状やトロフィーは目に見える物として残り続ける。一方、走ったり打ったり、自分の能力を最大限に発揮するときの幸福感は、形としては残らない。だから目に見える勝利が優先され、プレーの喜びは二の次になる」と。勝負の世界はその結果だけが焦点化されてしまうきらいがありますが、学生のスポーツは人格形成もその役割を担っています。試合中の心の動き―あせり、苦しみ、絶望、安心、余裕、自信など―が目まぐるしく変化していきます。そのような心の動きを俯瞰できるような見方ができると、敗れはしたものの、その経験がそのあとの生き方につながっていくように思えます。

さらに、「勝利は過大評価されている」には、「先日の全豪オープンテニスでも、栄養補給のためバナナを切らしてしまったロシア人選手に、対戦相手の英国人選手が分け与えた。敵に塩を送った英国人選手は試合に負けたが、後悔はしていないと発言した」と続けて書かれておりました。私たちは、相手のミスを期待したり、弱点を狙ったりと相手の弱みにつけこんで勝ちにこだわります。負けを正当化しているわけではありませんが、勝者はもちろん、正々堂々と戦った敗者にも人は称賛を送るのではないでしょうか。

高体連札幌支部テニス選手権大会閉会式の挨拶で「支部大会で惜しくも敗れた選手の皆さんも素晴らしい戦いをしてくれました。敗れはしましたが、これまでの努力に敬意を表します。努力してきたことは必ず結果に結びつくとは限りませんが、努力しなければ道は開けないのも事実です。努力してきたこと、挑戦してきたことを必ず次に生かしてほしいと思いますし、次に生きてくると信じています」と話をしました。

高校3年生、本校では6年生になりますが、次の進路に向けての準備が始まっています。試験があるその日まで、心が目まぐるしく変化していくと思いますが、大丈夫、君たちには十分にそれを乗り越える力がついています。次こそは受験という試合での勝利を期待しています。

 

令和5年(2023年)5月31

  校 長  宮 田 佳 幸