なかなか新型コロナウイルス感染症の収まりが見えてきません。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により、一旦はここ札幌の感染者数も減少したところですが、まん延防止等重点措置の解除後は、人の流れが多くなったことやデルタ株の影響などもあり、再び増加に転じています。100年前のスペイン風邪は終息するまでに3年かかりましたが、今回の新型コロナウイルスもそのような状況になるのでしょうか。ワクチン不足の問題もあり、予断を許さない状況がまだまだ続きそうです。

 そのような中ではありますが、大樹町のロケットの打ち上げの成功や、北海道大学ではやぶさ2が持ち帰ったリュウグウのサンプルの分析が行われるという話題など、ここ北海道においても科学的な分野の取組が進んでいます。本校は文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(通称SSH)の指定を受け、今年度通算10年目、2期目の最終年度を迎え、現在、これまでの取組を踏まえ、3期目の指定に向けて準備を進めているところです。

 このSSHですが、2011年、最初の指定を受ける前年、私も行政の職員として、当時校長であった岩本先生と担当の教員と3名で文部科学省まで行き、ヒアリングを受けました。多くは岩本校長が質問に答えておりましたが、うまく答えられなかったと札幌への帰り道は非常に口数が少なかったことを覚えています。しかし、見事に指定を受け、今年度10年目を迎えました。岩本校長の立場を今度は私が担うことになり、今年のヒアリングについて、しっかりと役割を果たさなければと考えているところです。

 さて、本校では、3年生において、総合的な学習の時間の一部を使って「コズモリサーチ」というものに取り組んでいます。これはデータ処理を用いた課題探究活動で、自分で仮説を立て、調査などを通してデータをグラフ化し、仮説を検証していくというもので、後期課程のSSHの取組につながるものとして実施しています。先日、「コズモリサーチ」の取組の発表があり、「マックとモスではどちらお得か」、「身長÷6.7=足の大きさ説」など、それぞれテーマを設定し、データをとり、グラフ化し、検証するという流れをプレゼンテーションの資料としてまとめ、生徒の前で発表しました。まだまだ荒削りな部分が多いですが、このあとの成長が楽しみです。この生徒の発表を見て、「走れよメロス」を思い出しました。これは、ご存じ太宰治の「走れメロス」の文章の内容を検証したものです。

 その当時、愛知教育大学附属岡崎中学校2年生であった村田一真さんが「メロスの全力を検証」し、2013年度、一般財団法人理数教育研究所開催の第1回「算数・数学の自由研究」作品コンクールにおいて、中学部で最優秀賞に輝きました(現在も一般財団法人理数教育研究所のホームページに掲載されております)。村田さんは、表現された地理、自然、生活を分析し、メロスが親友を助けるために10里の道を往復する速度を、3日間の足取りから検証しました。その結果、「平均時速は往路3.9/㎞、復路2.7~4/㎞、最後の死力5.3/㎞であり、メロスはまったく速くない。復路の終わりぐらいは最後の死力として走ったが、ただの速歩きだ。遅すぎる。『走れメロス』は『走れよメロス』が合っているなと思う。」と書いていました。初めて読んだときはすごい分析と感動を覚えたものでした。

 アンカリング効果という言葉があります。例えば、炊飯器を3万円以内で買おうとお店に行ったとき、「7万円のものがなんと半額の3万5千円」という値札がついた炊飯器を、予算オーバーですが買ってしまうというものです。アンカリング効果とは、最初に提示された数字や条件が基準となって、その後の判断が無意識に左右されてしまう、という心理で、船がいったん錨(アンカー)を下ろすと、そこからほとんど動けなくなることになぞらえています。

 見た目に左右されるのではなく、また話を聞いて鵜呑みにするのではなく、それを調査・分析し、それが正しいのかをしっかりと根拠をもって理解し示すことが重要であり、そのような力はこれからを生きる生徒が身に付けるべき力の一つになっています。

令和3年(2021年)7月21日
校 長  宮 田 佳 幸