現在、ヨーロッパでは、欧州サッカー連盟が主催するUFEA欧州選手権が開催されています。各国のサポーターによる応援が続いており、テレビでもその熱狂ぶりが伝わってきます。しかし、街中に繰り出したサポーターを見ると、大丈夫だろうかと思ってしまいます。イギリスでは、ワクチン接種が進み一日1,000人台であった感染者が、デルタ株の影響もあり1万人を超えるなど、再び感染者が急激に増加しているようです。ここ、日本においても、このあと、オリンピック・パラリオンピックを控え、感染者の急激な増加にならないよう、徹底した感染対策のもと、スポーツの祭典が無事終了することを祈っています。

さて、長期にわたる新型コロナウイルス感染症の影響により、今年度についても、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などにより、通常の教育活動を行うことができていません。本校は、生徒が主体的協働的な学習活動が行えるよう、通常2時間分の授業を合わせた100分授業を行っておりますが、3密を避けるため、ほとんどグループワークを行うことができていないなどの状況が続いています。

しかし、そのようなコロナ禍にあって進んだものの一つに、ICTの活用があります。生徒の発表会や私たち教職員の校外での会議なども、対面式からオンライン形式になることが多くなりました。先日行った6年次の「コズモエッセイ」(5年次で行った課題研究「コズモサイエンス」を英語による論文にしたもの)の授業では、北海道大学とオンラインで結び、代表生徒による同大留学生に対する英語での口述発表を行いました。

また、国内でコロナ禍が始まる前の2020年1月に、本校の生徒がカナダ・ブリティッシュコロンビア州のモスクロップ高校を訪問し同校の生徒と交流を行いましたが、現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う渡航の制限が行われていることから、今月上旬の2日間、4年次から6年次の生徒22名がオンラインにより同校の生徒と交流を行いました。これは、一般財団法人日本国際協力センターJICEが、日本政府が推進する国際交流事業の実施団体として、日本とアジア大洋州、北米、欧州、中南米の各国・地域との間で、将来、各界にて活躍が期待される人材を招へい・派遣するもので、特に北米との交流である「カケハシ・プロジェクト」の一環として行われたものです。

全体での交流後、本校とモスクロップ高校の生徒は小グループに分かれ、新型コロナウイルス感染症の話題を始め、環境問題、教育システム、先住民族、言語教育、ジェンダーの問題などについて英語により交流を深めました。現地で交流し、さらに今回のオンラインにも参加した生徒の一人は、「住んでいる環境が違うだけでこんなにも意見が違うことを目の当たりにし、多様な価値観を尊重し受け入れることで視野が広がり、世界が変わって見えるようになった」と感想を述べていました。

You are what you eat.「あなたは、あなたの食べたものでできている」つまり、健康は食べ物で決まる、という意味ですが、先日お亡くなりになった立花隆さんはその著書「思索紀行――ぼくはこんな旅をしてきた」(2004年、書籍情報社)の中で次のように紹介していました。「人間の知性は、その人の脳が過去に食べた知的食物によって構成されている。人間の感性は、その人のハートが過去に食べた感性の食物によって構成される。全ての人の現在は、その人の過去の経験の集大成としてある。」と述べています。

コロナ禍の中、先が見通せない状況ですが、生徒の皆さんには、様々な経験をする中で、見たり、聞いたり、読んだり、考えたり、感じたりしたことなどを通して大きく成長してほしいと思います。生徒はもちろん、私もまだまだ未徹在。さらなる経験が必要です。

令和3年(2021年)6月30日
校 長  宮 田 佳 幸