人生は敗者復活戦

 

現在、ラグビーのW杯がフランスで開催されており、プールDに入っている日本は初戦のチリ戦で6トライを挙げ、42対12の圧倒的勝利で初戦をものにしました。

前回2019年、日本で開催されたラグビーW杯では、プールAに入っていた日本は、アイルランドやスコットランドなど格上の相手に勝利し、決勝トーナメントでは敗れはしたものの、初の8強に進出し、今回のフランス大会では、その成績を上回ることが期待されています。

今年はWBCもありました。映画「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」を見ましたが、その戦いや勝利の裏側で繰り広げられたドラマを目の当たりにし、映画館で鑑賞していた人たちからは映画が終わると自然と拍手が沸き起りました。また、バスケットについても、男子日本代表チームが来年のパリオリンピックの出場権を獲得するなど、よいニュースを聞く機会がたくさんありました。

今年は36年ぶりに北海道で高校総体インターハイが行われ、出場した選手はもちろん、ボランティアとして、多くの北海道の高校生が活躍したところです。

まさにスポーツの年といっていいほどの様々なイベントが北海道内をはじめとして行われましたが、私にとっても久しぶりに経験したことがありました。

今年の7月、高校野球の夏の大会の札幌支部予選で、当初予定されていた開成の試合が、雨による順延で翌日にスライドした影響により、部長の先生が引率できなくなり、急遽ですが、私がピンチヒッターで責任教師としてベンチに入ることになりました。実に20年ぶりに円山球場のベンチに入りました。試合は残念ながら負けてしまいましたが、試合中の選手の息遣いを間近で感じることができ、白球を追いかける選手たちの真剣勝負のまなざしは、あの頃も今も変わりなく、プロ野球にない、高校野球のドラマがそこにありました。

その高校野球ですが、今年の夏の大会は、南北北海道大会の準決勝と決勝がファイターズの本拠地エスコンフィールド北海道で行われ、唯一、北北海道大会の決勝戦を観戦することができました。クラーク記念国際高校と旭川明成高校は緊迫した投手戦となり、10でクラーク記念国際高校が勝ち甲子園への切符を得ました。甲子園では2回戦で花巻東高校に惜しくも12で敗退しましたが、手に汗握る熱戦でしたので、テレビでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

今年の夏の甲子園は慶応高校が107年ぶりに全国優勝し、話題は慶応高校一色となりましたが、私は、決勝戦で敗れた仙台育英高校*1の須江監督の言葉が非常に印象に残っています。それは「人生は敗者復活戦」という言葉で、91日(金)の NHK NEWS WEB にも掲載されでいます。

須江監督は仙台育英高校野球部出身ですが、入学して1年半で選手としてのキャリアを終える決断をし、学生コーチとしてチームを支える側に回りました。その経験が指導の原点となったと須江監督は振り返ります。「人生は敗者復活戦」と、選手たちには、負けて、失敗して、それで終わりではなく、その後どうするかを考えればよい、と言い続けたとそうです。「人生は勝てることなんてほとんどなくて、だいたい負けです。野球を続ける子も続けない子も、それぞれの人生が続いていきます。この負けを敗者復活戦のエネルギーにして、人生を望んでほしい。」これは、決勝戦で負けた日の夜、須江監督が宿舎で3年生に伝えた言葉*2です。

開成の入学式では、式辞の中で、新入生に向けて、次のような話をしています。「開成中等教育学校での学びの主役は生徒の皆さんです。先生方はそんな皆さんの背中を押して応援しますので、いろいろなことに積極的に挑戦してほしいと思います。時にはうまくいかなかったり失敗したりするかもしれませんし、失敗したらどうしよう、とやる前からしり込みしてしまうかもしれません。失敗は大いに結構、たくさん失敗をしてください。大切なことは、失敗したらそこから学ぶということです。失敗を恐れず、いろんなことにチャレンジをしてください。」

今年度も生徒たちは様々なことにチャレンジしています。前期終業式の日、終業式の前に賞状伝達式があり、各種大会やコンテストなどで賞を取った生徒へ、これまでの努力に敬意を払い賞状を渡します。しかし、結果を残せなかった生徒も同じように努力を重ねてきたことと思います。何が必要だったのか、何が足りなかったのかをしっかりと振り返り、次への挑戦を期待します。そう、人生は敗者復活戦なのだから。

 

*1 仙台育英高校は国際バカロレアのDPの認定校。

*2 「NHK NEWS WEB」のWEB特集より。

 

令和5年(2023年)9月14日

校 長  宮 田 佳 幸