後期の始まりに当たって、今日はテニスのお話をします。先日、テニスの全米オープンで大坂なおみ選手が、セリーナ・ウイリアムズ選手を破って、日本人選手として初めて優勝しました。36歳のセリーナ・ウイリアムズ選手は、グランドスラムといわれる四大大会でこれまで23回優勝した偉大なスーパースターです。今回優勝すれば歴代タイ記録になることや、昨年9月の出産後の復帰戦であることで、観戦する多くの人たちはセリーナを応援しているなかでの優勝でした。

この試合結果については、世界中で大きな話題になり、アメリカでは、普段あまりテニスに関心を持っているわけではない人たちまでが、顔を合わせればこのことを話題にしている、といわれていました。それは、この試合が実に様々なことを感じさせるからだと思います。例えば、試合中のウイリアムズ選手の感情的な振る舞いがどうだったのか、それに対する審判の判定は、同じようなことを男子選手がしても大きな問題にならないのに女子選手だと「ヒステリックだ」とされペナルティを課される、という女性差別があったのか、とか、ブーイングの中の表彰式で、涙を隠そうとする大坂選手の肩を抱いて、ウイリアムズ選手がブーイングをやめるよう観客に呼びかけたこととか、話題にしたくなることが沢山あります。

 

これらの中で私が皆さんに語りたいことが二つあります。一つは大坂選手が負けなかった理由についてです。彼女の快進撃の背景には、昨年12月から就任したバインコーチの存在が大きいと言われています。大坂選手がバインコーチから学んだことは何だったのでしょうか。それはポジティブになること、つまり、苦しい時こそ冷静に今できることに集中する、焦って決めようと強打するとミスして自滅してしまうので、ねばってラリーを続けることでチャンスを待ち、相手のミスを誘う、ということを学んだのだと思います。これは「我慢のテニス」という言葉で言われています。確かに、感情的になるウイリアムズ選手がペナルティを受けたことで会場が異様な雰囲気となるなかで、冷静さを保って集中力を切らさなかった。これが大阪選手の勝因といえます。困難を切り抜ける時に、功を焦らず(無理に勝とうとしないで)、今できることに集中し、我慢してチャンスを待つことは、いろいろな場面で参考になるやり方だと思います。

 

二つ目は大坂選手の言葉の力です。表彰式で大阪選手はこう言いました。「皆さんが彼女を応援していることは知っていますから、こんな結果になってごめんなさい。ただ、試合を見てくださってありがとうございます。」「ごめんなさい」と訳された「アイムソーリー」という言葉は、「自分が悪い」という意味ではなく「自分も残念だ」というニュアンスなのだそうです。そして、子供の頃から憧れていたウイリアムズ選手と全米オープンの決勝で戦うことが夢だったこと、それがかなってうれしい、とセリーナへの感謝の気持ちを伝えました。勝利を誇るだけのコメントではなく、相手への敬意や感謝を込めた気遣いのあることばで、自分の率直な思いを語ったことで、観客のブーイングは歓声に変わり、彼女へのリスペクトが広がりました。他の場面でも、彼女の語るコメントは、試合の時の厳しさと裏腹な「天然」なところが愛されて大変注目されていますが、相手への敬意や配慮、感謝を忘れずに自分の思いを率直に表現することが、人と理解し合い仲間になるためには大切なことだと改めて感じました。私たちみんなが身につけたい態度だと思います。

 

皆さんは、どんなことを感じたでしょうか。

後期に向けて、皆さんそれぞれが自分の目指すものをもって、頑張ってほしいと思います。